17. トーチカ − ブラント中佐

ドアが開き、シュタイナーが入ってくる。ブラントのしかめっつらが晴れる。
足早に歩み寄ってシュタイナーに会い、その手を熱烈に掴む。

  ブラント
  来たか──こんなにだらしない軍人はいないぞ。

笑ってシュタイナーに椅子を勧める。

  ブラント
  (笑って)
  報告は読んだ。計りしれない価値がある。個人的に将軍に伝えるつもりだ──
  ああ、ひとつ。シュトランスキー大尉が銃について公式に抗議してきた。
  それについて何か言っておかねばならない事は?

  シュタイナー
  (表情を変えず)
  何を言えるってんです? ロシア軍の銃を持つためにドイツの銃を投げ捨てたんですよ。

  ブラント
  何故だ?

  シュタイナー
  ロシアの銃の方が優れています。私はわかっている。あなたもご存知だ。
  兵士も知っている。シュトランスキー大尉はちょっと無知のようです。

ブラントは彼を見る。

  ブラント
  お前は新米だな。

  シュタイナー
  は。

ブラントはシュタイナーを見るとシュトランスキーの報告を握りつぶした。
彼はシュタイナーにたばこを差し出す。

  ブラント
  先月、前線から引き上げて司令部勤務に就くように言ったが?

  シュタイナー
  は。お断りしていると記憶してます。

  ブラント
  部下への軍人としての思いとやらか…… うむ──再度申し入れよう。
  司令部要員になってほしい。

シュタイナーからの返事はない。

  ブラント
  わかった──今度の断る理由は何だ?

  シュタイナー
  (少ししてから)
  誰にも頼られたくはないのです──連隊長殿であっても。

  ブラント
  変わらんな、お前を理解するのは難しいことがわかったよ。

  シュタイナー
  (淡々と)
  それを聞き残念であります。良き曹長とは将校から完全に理解されている
  べきでありますから。

  ブラント
  シュタイナー! お前は私をからかっているのか?
  (近寄る)

シュタイナーは立ち上がり、ブラントがどうするか見る。
ブラントの口がビクビクしている。

  ブラント
  (声を震わせて)
  出て行け!

シュタイナーは半端な敬礼をして去る。

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18. クローズショット − マーク

が、機関銃掩体にいる。夜の帳が下りる。マークは空を覗き込む。
突然、ロシア軍の短機関銃が火を噴く。
マークは、驚き、頭を泥に突っ込もうとする。

19. ミドルショット − シュタイナー

が暗闇の中を歩いている。銃弾の炸裂に、片ひざをついた。
ふたたび静寂となり、シュタイナーは闇の中を注意深く凝視する。
またもや銃撃連射があり、シュタイナーは地面にうつ伏せる。
そしてまたも静寂がある。シュタイナーはすばやく起きて最寄の機関銃掩体
に跳び込み──マークへ激しく迫るが、マークは出て行こうとしている。
銃撃がもう一連射。

  シュタイナー
  (聞こえるように叫ぶ)
  どこへ行くんだ?

  マーク
  (どもりながら)
  増援を呼びに──

  シュタイナー
  (怒って)
  それで持ち場を離れるのか?

マークを壕に押し戻す。彼らは、ロシア軍の機関銃が静かになるまで一緒に
縮こまっている。そしてシュタイナーは銃眼を通して凝視する。砲弾が数発、
空をヒューンとやって来て、近くで爆発する。

  マーク
  (あえぎながら)
  やつら、間違いなくすぐ前にいます。砲弾で壕が崩れます。

背後で走る足音が聞こえ、シュヌルバートが掩体壕に飛び込む。
続いてクリューガーとーホラーバッハ、マイヤー少尉がやってくる。

  マイヤー
  どうなっている?

  シュタイナー
  斜面の大きな窪みにロシア軍が多数います。

マイヤーは数秒間、苦々しく立っているが、そして:

  マイヤー
  (シュタイナーへ)
  弾幕の信号を。クリューガー──中隊の残りを集めろ。
  おれは司令官に知らせる。

マイヤーが急いで出て行く。シュタイナーが信号拳銃を拾う。
身をかがめて、掩体壕を去る。

20. ミドルショット − シュタイナー

が、塹壕の陣地に着く。信号拳銃にカートリッジを挿入、照明弾を撃ち上げる。

21. フルショット − 丘の斜面

が照明弾で照らされている。窪みの中に浮かび上がったロシア兵の影が見る
ことができる。そして暗闇−−そしてもう一度、景色が照らされる。
地面に伏せようとする影が見える。

22. ミドルショット − シュタイナー

が時計をみてため息をつく。そして苦笑していると、頭上にヒュルヒュルと
鈍い音が轟く。それが急速に力強いうなり音となり、あっという間に大爆発が起こる。
シュタイナーは向きを変えるとスタスタという急ぐ足音が聞こえてくる。
自分を追い越して機関銃掩体に走るマイヤーが見える。シュタイナーが後を追う。

23. 機関銃掩体

へマイヤーに続いて、シュタイナーが滑り込む。小隊の兵士は既に集まっている。

  マイヤー
  隊長命令。第2小隊はただちに反撃にかかれ。窪地を占領、できるだけ多く
  捕虜を取れ。シュタイナー曹長、お前が指揮を取れ。どうすべきだと思うか?

  シュタイナー
  (少し考えて)
  3方向から攻めましょう。クリューガーは西から、シュヌルバートは東から、
  そして私が南から。射撃を始めるときには、援護砲撃が必要です
  ──ロシア軍を森に釘付けにしておくために。それでいいと思います。

  マイヤー
  (うなづく)
  理にかなってるな。実際にうまくいってほしいものだ。

  シュタイナー
  (にやりと笑う)
  単純すぎます。絶対にうまくいきません。いいでしょう──第1小隊、
  おれが行くまで塹壕に伏せていろ。

身をかがめて、アンゼルムとパスターナックを先頭に、兵士は塹壕へ降り始める。

24. トラックショット − 兵士

は身をかがめ緊張で張り詰めた顔で塹壕へ降り進む。武器がガチャガチャと音を立てる。

兵士たちは止まり、互いを見る──あるものはひきつった笑顔をしている。

  アンゼルム
  (神経質な笑い)
  曹長、──電話要請をいたしましょうか?

陽気なところが全くない苦笑が兵士たちの中で起きる。

  シュタイナー
  (クリューガーに)
  お前は部下とここにいろ。

シュタイナーが腕を挙げる。残りの兵士たちが続く。

25. 塹壕の向うへ降りた地点

で、シュタイナーと兵士が視界に入ってくる。シュタイナーは手を挙げて
止まれの合図をする。そして、塹壕越しを凝視し、身を乗り出し、
部下に続くよう合図を出す。

26. 丘の斜面

シュタイナーと兵士の、斜面を降る影が見える。平地に着くと、シュタイナーが
止まれの合図をもう一度出す。

  シュタイナー
  (シュヌルバートに)
  ここで待機。5分後きっかりに攻撃──

シュヌルバートは時計を見る。

  シュタイナー
  最初の銃撃があったらすぐに行く。いいか?

  シュヌルバート
  (不平気味に)
  了解です。

シュタイナーと握手する。シュタイナーは、ケルン、アンゼルム、パスターナックを
追って暗闇の中へ歩いていく。

28. クローズショット − 地表のシュタイナー

シュタイナーの例に倣い、他の兵士たちが無言で追ってきている。
匍匐しているアンゼルムが画面に入ってくる。

  アンゼルム
  (ささやく)
  なにかまずいことでも?

シュタイナーが頭で左側を示す。アンゼルムがその視線を追う。

29. ロングショット − おぼろげな隊列の姿

が、闇の中を注意深く動いている。20メートルも離れていない。

30. シュタイナーと部下

  アンゼルム
  露助! 100人はいる!

  ためらうシュタイナー。

  シュタイナー
  シュヌルバートには何人いる?−−12人か? やつら、シュヌルバートに
  まっすぐ向かっていくぞ。

  アンゼルム
  今すぐやつらを撃ったらどうです?

  シュタイナー
  それだと反撃計画全体がだいなしになってしまうだろう。
  (唇をかみしめ、懸命に考える)
  シュヌルバートにはやつらが向かってきてるのさえ見えてないだろう──

ベルトの信号拳銃に手を伸ばす

  シュタイナー
  照明弾を2発−−シュヌルバートはお客さんが集まってきてるのが見える──
  そのときに、やつらの背後をおれたちが射撃を開始したら──
  (肩をすくめて)
  おそらく、混乱に──

照明弾2発を間隔をおかずに放つ。

31. ロングショット − ロシア軍隊列

が奇襲を受ける。射撃音が鳴り響き、数人が崩れ落ちる。

32. ミドルショット−シュタイナーと兵士

  シュタイナー
  いいぞ──背後からだ。一緒に固まって、手榴弾を惜しむな。
  (皮肉で)
  忘れるな、全ドイツ国民の目がお前たちに注がれていることを。

ロシア軍の方向へ走っていき、兵士たちが続く。

33. シュトランスキー大尉のトーチカの外

銃撃と大爆発の音で空気がビリビリとしている。シュトランスキー大尉が
トーチカ外へ走ってきて、トリービッヒ少尉が続く。二等兵が反対方向から
走ってきて画面に入る。

  二等兵
  シュヌルバート伍長から伝言であります。ロシア軍が塹壕へ突入しました。

トリービッヒが警戒する風

  シュトランスキー
  (トリービッヒへ)
  本部要員全員でトーチカ前面の陣地を奪取せよ。戦闘のやりかたは電話で伝える。

シュトランスキーは向きを変え、トーチカへ走りこむ

34. クローズショット−シュタイナーとアンゼルム

が機関銃の配置についている。斜面に寝そべりながら、塹壕前面へ射撃している。

  アンゼルム
  なぎ倒しています。

  シュタイナー
  誰だ? 友軍か、敵軍か?

35. 第2小隊のトーチカ外

機関銃射撃が遠くで炸裂する音。ホラーバックとケルンがアンゼルムを援護しつつ
あるが、アンゼルムはかなりヨタヨタしている。
彼らの背後にはドルンとクリューガーがいる。みんな疲れ、すすけているように見える。

36. トーチカ内

に入る。

  ケルン
  (アンゼルムへ)
  お前はマヌケだ、野戦病院へ行かないなんて──

  アンゼルム
  (床に崩れながら)
  混雑が終わる休日まで待つのさ。じゃなきゃ、なんともなくとも切断したがるんだ。

  ホラーバッハ
  いったいどうなったのか誰かまだわからんか?

  ドルン
  (ぼうっとしているよう)

───混乱───混乱───

  アンゼルム
  何もわからなかった。何かが動くとそいつを撃った。
  たぶんロシア兵とおなじぐらいドイツ兵をやっただろう。

  ホラーバッハ
  黙れ!

  アンゼルム
  頼むぜ−−負傷兵に少しは敬意を。

シュタイナーが入ってくる。頭の上に包帯をしている。

  シュタイナー
  クリューガー、信号でどうなった?

  クリューガー
  窪地を掃討していましたが───
  そのとき曹長の方向から射撃音が聞こえました──

  シュタイナー
  正式な招待状を待ってるんじゃないかと思ってたぞ。

  クリューガー
  クソなあてこすりはなんとかならんですか。尻拭いしたんですぜ。

  シュタイナー
  おや、そうか? それじゃ、お前はおれのをなんとかでき──

37. ミドルショット トーチカ入り口にて

シュトランスキーとトリービッヒが入ってくる。兵士が注目し始める。

  シュトランスキー
  (そっけなく)
  休め。
  (シュタイナーへ)
  ひどいことだ。第2中隊の半数が行動不能になったのを知ってるか?

  シュタイナー
  はっ。我が小隊もやられました。

  シュトランスキー
  何故、予定通りに計画を実行しなかったのだ?

  クリューガー
  計画なんて──

*以下SCENE67まで不明。